なんとかなる

乳がんサバイバーの備忘録。

長い入院生活といろんな訪問者。

ぜんぶ、ドレーンのせいだ。

 

術後ドレーンを二本つけていた。一本はすぐにはずれたけど、排液の量が減らなくてもう一本がどうにもこうにもはずれない。

 

主治医の説明だと5日くらいと言われていた入院期間、なんと結局13日となりました。

…ええ、すごい個室代ですよ。給料もぶっ飛びますよ。

 

最後の5日くらいは毎回看護師さんに、

まだですか?まだですかー!

って聞いてたけど、なかなか50cc以下にならなかった。

 

抗ガン剤がイヤ

これからの不安と、抗ガン剤のイヤイヤさで、事あるごとに涙が止まらなかった。看護師さんに優しい言葉をかけてもらえば泣き、一人夜中に悲しくなっては泣き。

あまりに不安定だったから主治医が手を回してくれたのか、乳がん専門の看護師さんと話をした。

看護師さんは、もちろんどんなに泣いても動じず、ずっと手を握って、話を聞いてくれた。正真正銘の白衣の天使だ。

不安なことを全部話し、悪くなるかもわからないのになぜ今抗ガン剤しなきゃならないのか、という質問もぶつけてみた。 

 

乳がんて全身病だから、どこに転移するかわからなくて、例えばもし脳とかに転移したら、また全然違う治療をしなくちゃいけなくなります。それは大変なこと。だから、そうならないように、その可能性を減らすんです。

とっても、腑に落ちた。

 

わたしはどこかでまだ取ったら治るものって思っていた。でも実際は、

見えないがん細胞がもしかしたら散らばっているのかもしれないんだ。

リンパ節に転移してたんだから、その可能性は多いぞ。

ってこと。

白衣の天使が長い時間をかけて話をしてくれたおかげで、少しだけ気持ちが落ち着いた。

 

訪問ボランティア

もうひとつ、その天使に勧められたのは、訪問ボランティアの方とお話してみてはどうですか?ということ。

入院中(もしくは、退院後でも可)、乳がん体験者の方とお話できるのだ。

アンケートがあって、どんな人と話をしたいか書くと、都合の合う日に部屋に訪問して来てくれるというもの。聖路加独自の制度みたい。

わたしは早速予約した。抗ガン剤の恐怖を早くなくしたかった。

 

ある日の午後、その方は部屋にいらした。

こんにちはー!

と明るい声で入って来た。

初対面だし、同じ病気の人と友達以外でちゃんと話したことはなかったし、人見知りだし、最初どうしたらいいのかわからなかった。でも今の状況と不安を話していくと、その方の体験を話してくれた。

 

年上のその方は、10年以上も前に乳がんを体験されていて、今はとっても元気に暮らしてる。その頃は入院して点滴していたけど、今は抗ガン剤も副作用を減らす薬ができたおかげでその頃よりは全然ラクになっていることを聞いた。副作用も人それぞれ全然違ったと聞いた。

ほんとににこやかに話す方で、

なんか、もしかして、大丈夫なんじゃないかな

って、初めて思わせてくれた。

いつでも連絡くださいね、と連絡先の入った名刺をいただいた。

 

このボランティアの制度、本当に素晴らしいと思う。

もしも聖路加に乳がんで入院する人がいたら、ぜひお話してみてほしい。たぶん元気をもらえると思う。

 

チャプレン来たる

同じ日の朝、朝ごはんのあと暇だったので、朝の礼拝に出てみた。パジャマで。

その礼拝には誰でも来ることができて、なんならご近所の方もOKらしい。その日は10人くらい参加していたかも。

キリスト教には詳しくないのだけど、その日はパンとぶどう酒を振舞われるというお祈りの日だった。キリスト教徒ではないけれど、頭に手を当ててお祈りをしてもらった。涙が出た。

部屋を出る前にチャプレンに話しかけていただき、握手をして、大丈夫と勇気付けられた。

手を当てる、って、人の温かさを直に感じることができて、すごいパワーなんだな、って知った。

 

入院患者の人は病室を書くようになってたので、書いてきたら、チャプレンが部屋に来てくれた。

最初いらした時はボランティアの方とのお話中だったので、わざわざ時間をあたらめて来てくださった。

たわいもない話で終わったのだけれど、

「禍福は糾える縄のごとし」

という言葉をいただいた。 

英語で好きな言葉に

"Every cloud has a silver lining."

というのがあるのだけど、調べたら似たような意味だった。

 

人生、いいこともあれば悪いことも。

でも悪いことばっかりでもないはず。

 

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